新型コロナウイルス感染症は、これまで、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」に位置付けられていましたが、令和5年5月8日から「5類感染症」になりました。
以下、その変更に伴い、医療機関において気を付けるポイントを列挙いたします。
5類への移行により、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本とすることになりますが、医療機関においては、引き続き診療への影響を防ぐための感染症対策やクラスター発生を防止する観点から、院内では医療従事者および患者の双方にマスクの常時着用を原則とするべきでしょう。
新型コロナ患者、疑いのある患者への診察には、サージカルマスク、 ゴーグル・フェイスシールドの着用(飛沫曝露のリスクがある場合)、手袋とガウン(患者および患者周囲の汚染箇所に直接接触する可能性がある場合)、 N95マスク着用をするのが望ましいといえます。
また、院内のゾーニング・動線分離も必要であり、待合の工夫、パーティションによる簡易な分離、空き部屋等の活用をする他、上記の空間的分離が構造的に困難な場合は時間的分離で対応を行う必要があります。
専用病棟化は基本的に不要ですが、病室単位でのゾーニングは必要です。
コロナ確定患者は個室にすることが望ましいですが、同じ感染症の患者同士を同室とすることも可です。一方でコロナ疑いのある患者は、コロナ以外の疾患の可能性もあるため、確定患者と同室にはせずに、別の病室となるよう原則として個室に収容するべきです。なお、病室内から廊下へ空気が流れないよう、空調換気設備の吸排気の設定や適切なメンテナンスは不可欠です。
⾯会者から患者への感染リスクを考慮して、マスクの着用、面会者の体調確認(体温測定等)、面会時間の短縮化、面会人数の制限などの⼀定の制限をすることは妥当です。また、面会場所についても、常時換気のできる広めの部屋などを使用した方が良いと言えます。
患者が発熱や上気道症状を有している、コロナに罹患している、もしくはその疑いがあるということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項に違反すると思われます。そのような理由で診療を拒否することは、同項に規定する診療が拒否できる「正当な事由」には該当しないためです。
したがって、前記のように発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行うことが求められています。
(弁護士 鈴木 成之)