ファイ法律事務所
ファイ法律事務所

法律情報LEGAL INFORMATION

顧問弁護士・企業法務/ファイ法律事務所ホーム > 法律情報 > 公益通報者保護法の改正法が施行されます

公益通報者保護法の改正法が施行されます

2022.05.30 Mon  PHI LAW OFFICE STAFF

公益通報者保護法の改正法が2022年6月1日に施行されます。
改正法の主な内容は以下のとおりです。

1 事業者に内部公益通報の対応体制の整備を義務付け、違反した事業者に対する行政指導

事業者は、内部公益通報の対応体制の整備として、以下のような措置をとることを義務付けられることになりました。

① 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備

・内部公益通報受付窓口の設置、対応部署・責任者の定め
・組織の長、その他幹部からの独立性の確保に関する措置
・公益通報対応業務の実施に関する措置
・公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置

② 公益通報者を保護する体制の整備

・不利益取扱いの防止に関する措置
・範囲外共有の防止に関する措置

③ 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置

・労働者等、役員、退職者に対する教育・周知に関する措置
・是正措置等の通知に関する措置
・記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置
・内部規程の策定及び運用に関する措置

これらの措置をとらない事業者は、消費者庁からの報告徴収、助言、指導及び勧告の対象となるほか、勧告に従わない場合は公表の対象となる可能性があります。

 

2 内部公益通報への対応業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)の指定、公益通報対応業務従事者の守秘義務

事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して、対応業務(内部公益通報の受付、調査、是正措置)を行い、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、「公益通報対応業務従事者」として指定しなければなりません。
また、公益通報対応業務従事者は、対応業務に従事している間はもちろん、配置転換や退職によって対応業務に従事しなくなった後も、対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させる情報を第三者に漏洩してはならず、違反者には罰則(30万円以下の罰金)が科せられることになりました。

 

3 公益通報者の範囲に退職者と役員を追加

公益通報者の範囲は、従前は労働者に限定されていましたが、改正法により、退職者と役員が追加されることになりました。
ただし、退職者は、退職後1年以内の者に限定されます。

 

4 通報対象事実の拡大

従前は、刑事罰の対象となる行為のみが通報対象でしたが、改正法により、行政罰の対象となる行為も追加されました。

 

5 行政機関に対する公益通報の要件緩和

行政機関に対して公益通報を行う場合、従前は、通報対象事実を信ずるに足りる相当の理由があることが要件とされていましたが、改正法により、相当の理由がない場合でも、氏名・住所・通報対象事実の内容等を記載した書面を提出することにより、行政機関への公益通報を行うことが可能になりました。

 

以上が改正法の主な内容ですが、事業者にとって特に影響が大きいのは、対応体制整備義務(上記1)と公益通報対応業務従事者の指定(上記2)です。事業者が講じるべき措置の具体的内容に関しては、内閣府から指針とその解説が公表されています。
なお、従業員数300人以下の中小事業者については、対応体制の整備と公益通報対応業務従事者の選任は努力義務とされていますが、上記5のとおり、行政機関への通報の要件が緩和されたことから、中小事業者においても、内部への通報を経ずに突然、行政機関に対する通報がなされることのないよう、内部公益通報の対応体制の整備を検討することが必要です。内部での受付・調査体制の構築が難しい場合は、弁護士等の専門家に外部窓口を委託することも考えられます。
また、内部公益通報対象業務従事者に指名された従業員は、罰則付きの守秘義務という重大な責任を負うことから、内部公益通報対象業務に従事するにあたり、その内容と責任を十分に理解してもらうことが不可欠です。そのためには、事業主において事前の教育、研修を行うことも必要となります。

(弁護士 内田 靖人)

SHARE US ON
« »
BACK TO PREVIOUS