新型コロナウイルス感染症の拡大、及び緊急事態宣言により、事業活動に影響を受けている事業者の事業持続のために有益と思われる点について列記いたします。
営業自粛及び外出自粛が求められている中では、休業または時短営業をする他ない業種も多く、通常通り営業をしていても、ある程度売上が減少することはある程度避けられないことです。
そのため、資金繰りを悪化させないために、売上減少分を補完する資金を調達することにより、固定費の支払原資を確保する必要があります。そのためには、無利子、無担保融資や、国や地方自治体が行う給付金、助成金の利用の検討が必要になります。
一方、支出の面で考えると、借入金や賃料の支払が困難な場合、減額や支払期日の延期ができないかを交渉する必要がある他、国税、地方税などの公租公課について延納の申請も検討する必要があります。
これらの情報は、各省庁のホームページなどから入手することができますが、本記事では関連するサイトのリンクを掲載しつつ、説明を加えました。
目次▼
政府は、日本政策金融公庫等に新型コロナウイルス感染症特別貸付制度を創設し、実質無利子・無担保の資金繰り支援や日本政策投資銀行及び商工組合中央金庫による危機対応業務を行うなど、総額1.6兆円規模の金融措置を決定していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、さらに中小・小規模事業者向けに38兆円規模、中堅企業・大企業向けに5兆円規模の金融措置を講じることにしています。
経済産業省では、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫等の各政府系金融機関の融資等の申し込みを検討されている事業者向けに、申込・相談の方法や問合せ先をまとめた資金相談特設サイトを開設しています。
[経済産業省資金相談特設サイト]
https://www.meti.go.jp/covid-19/shikin_sodan.html
また、政府系金融機関以外の民間の金融機関でも支援策が設けられています。
[経済産業省]
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200501008/20200501008.html
このほか、中企業基盤整備機構の小規模企業共済の契約者は、小規模企業共済制度の緊急経営安定貸付もありますので、その利用も可能です。
[中小企業基盤整備機構]
https://www.smrj.go.jp/kyosai/info/disaster_relief_r2covid19_s.html
感染症拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧となる、事業全般に広く使える、持続化給付金の支給が開始されています。
一定の要件を満たすことが前提になりますが、前年度と今年度の月売上比較で、50%以上売上が減少した月がある場合、その減少後の月額売上が1年間続いた場合の年間売上が、前年売上を下回る場合、法人は200万円を上限に、個人事業主は100万円を上限に給付金が支給されることになりました。
令和2年5月1日から申請受付が開始されており、申請後に2週間程度で口座へ振り込まれることになっています。そのため、要件を満たす事業者は申請を検討するべきです。
電子申請が原則ですが、電子申請を行うことが困難な方のために、令和2年5月12日(火)より順次、「申請サポート会場」を開設されることになりました。
なお、不備があると振り込みが遅れる他、虚偽申告など不正受給には利息を付した返還請求、氏名公表などの措置が取られる場合がありますので、申請の際は注意が必要です。
[持続化給付金申請サイト]
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
[経済産業省持続化給付金]
https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html
今般の新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受けて、金融庁は金融機関に対して、「事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること。また、この取組状況を報告すること」を求めております。
そのため、返済猶予等の既往債務の条件変更申入れに対しては、ある程度柔軟に対応してもらえると思われますので、資金繰りに影響がある場合は、金融債務の条件変更の申し入れを検討してみてください。
休業している事業者の場合、従業員を解雇することなく休業期間中に休業手当を支払った場合、雇用調整助成金の制度を活用することが可能です。
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成するものです。
解雇等を行わず雇用を維持する中小企業に対し、
(1)都道府県知事からの休業等の要請を受けた場合は、一定の要件のもとで、休業手当全体の助成率を100%にする、とともに、
(2)要請を受けていなくても、休業手当について60%を超えて支給する場合には、その部分に係る助成率を100%にすることとしました。(令和2年4月8日以降の休業等に遡及して適用)
[厚生労働省]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
[問い合わせ先]
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10702.html
(1)事業収入の減少がある場合
税金や社会保険料など、公租公課の支払の負担が重い場合もあります。
この点に関しては、2020年2月以降、売上が減少(前年同月比▲20%以上)したすべての事業者について、無担保かつ延滞税なしで納税に猶予(原則として1年間)が可能とされました。法人税や消費税、固定資産税など、基本的にすべての税が対象となり、猶予期間中の延滞税は免除されます。
(2)事業収入の減少がない場合
この場合も、以下の「個別の事情」があれば納税が猶予される場合があります。
①災害により財産に相当な損失が生じた場合
②本人又は家族が病気にかかった場合、納税者本人又は生計を同じにする家族が病気にかかった場合、
③事業を廃止し、又は休止した場合
④事業に著しい損失を受けた場合
[国税庁]
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm
https://www.mof.go.jp/tax_policy/brochure1.pdf
厚生年金保険料等を一時に納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあるなどの一定の要件に該当するときは、納付すべき保険料等の納期限から6ヶ月以内に管轄の年金事務所へ申請することにより猶予が認められる場合があります。
[問い合わせ先は最寄りの年金事務所]
https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html
個人又は企業にかかわらず、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、電気・ガス料金の支払いに困難な事情がある方に対しては、その置かれた状況に配慮し、料金の未払いによる供給停止の猶予など、電気・ガス料金の支払いの猶予について、供給会社に対して柔軟な対応を行うことが政府から要請されています。
[電気料金に関する対応事業者一覧(対応予定を含む)]
https://www.enecho.meti.go.jp/coronavirus/pdf/list_electric.pdf
[ガス料金に関する対応事業者一覧(対応予定を含む)]
https://www.enecho.meti.go.jp/coronavirus/pdf/list_gas.pdf
以上、事業者にとっては厳しい状況下にありますが、上記の支援策をうまく活用し、困難を乗り切っていただきたいと思います。
資金繰りが厳しい状況下での事業継続の可否や再生の方法についてご相談がありましたら当事務所へご連絡ください。
弁護士 鈴木 成之